1. はじめに

宇宙のごく初期、世界はエネルギーに満ち満ちていました。このエネルギーを元に素粒子が生まれて放射線となってて飛び交い、さらに凝縮して進化していく過程と見ることができます。エネルギーが凝縮して素粒子が生まれ、水素が生まれ、さらに凝縮して恒星になり、恒星の中で水素はより重い原子核に成長し、燃え尽き、超新星爆発などによって物質が宇宙に撒き散らされました。

太陽系はこの超新星爆発によって宇宙空間にばらまかれた物質が凝集して出来たので、地球には多くの放射性物質が取り込まれました。地球自らが持っている放射性物質の総量は地球を内部から温めてマントル活動の源となっているほど膨大ですが、その密度はとても希薄なので、生き物にとっては安全です。また地球に降り注ぐ放射線(宇宙線)も大気によって遮蔽されて、やはり生き物にとって安全な程度に希薄です。

このように放射線安全が保たれている中で育まれて高度に進化したヒトは、物質が凝集し、生命が生まれて進化してきたことの結果です。ヒトは云わば放射線の申し子とも云うべき存在なのですが、放射線および放射性物質の存在をヒトが認識したのはそこそこ120年前です。しかしそれ以後、ヒトの放射線に関する知識は急激に進み、物質世界についての認識を極限近くまで深めるだけでなく、放射線を自ら作り出して多様な形で操ることを始めて止まるところを知らないかの如くです。

そのような中で、ヒトの放射線に関する知識は非常に屈折しています。例えば、巨大加速器プロジェクトでは広大な敷地に金額的にもエネルギー的にもヒト社会の限界を超えるスケールになっています。核融合プロジェクトでは地球上に太陽を超えるエネルギー密度の核融合場を現出させようという向こう見ずをしようとしています。しかしその一方で、原子力施設からの公衆への放射線影響を年間1mSv(1ミリシーベルト)以下に抑えることによって絶対的な放射線安全を担保しようとしていながら、なおもヒトビトは放射線に恐怖を抱くという無意味をもやっているのです。合理性の観点からはどちらも望ましい形ではありません。


このようなことを見渡すことができるような、お話をこれから始めようと思います。少し長くなりますので、何回かに分けてご覧ください。
なお、広範な内容を取り扱っているので、個々の事がらについては簡略にしてむつかしくなることを避けています。興味を持った個々の事がらについては、さらに詳しく調べて勉強してください。